ネガティブ感情を感じると、なぜスマホ・お酒・お菓子に手が伸びるのか?〜アディクション(依存・嗜癖)と“感情回避”の深い関係〜

依存行動と感情回避の関係

私たちは誰しも、「感じたくない感情」と出会う瞬間があります。
仕事での失敗、対人関係の行き違い、家庭内での衝突──そんな時、ふと手が伸びるスマートフォンやお菓子、あるいはお酒。
何気ない「気晴らし」の背後には、感情から逃れようとする無意識の反応が隠れているかもしれません。

この記事では、依存行動と感情回避の関係について、心理学的な観点からひも解きます。

「感じたくない!」は、ごく自然な脳の反応

不安、怒り、悲しみ、虚しさ、孤独──
こうしたネガティブ感情は、脳にとって“危険”と判断されやすいものです。人間の脳は「苦痛を避け、快を求める」という原則に従っているため、嫌な気持ちを避けることは、生き延びるための本能的な戦略でもあります。

このとき脳は、「気晴らしをしよう!」と私たちに指令を出します。
そして出番となるのが、スマホ、アルコール、過食、買い物、SNS……。これらは一時的に感情を鈍らせ、「ラクになった」と錯覚させてくれる“麻酔”のような役割を果たします。

アディクティブな行動は、確かに一瞬は効く

  • SNS:通知や情報に没頭して、不快な気持ちを忘れさせてくれる
  • アルコール:気分がぼんやりして、現実のつらさを遠ざけてくれる
  • 甘いものや炭水化物:一時的に安心感や快感をもたらしてくれる

しかし大切なのは、「感情そのもの」は、消えていないということです。
見ないふりをしても、感情はまるで冷蔵庫の中の牛乳のように、やがて腐敗して悪化します。

その結果起こるのが、
「回避 → ごまかし → 自己嫌悪 → 再び回避」という負のループです。

回復の第一歩は、「見たくない」に気づくこと

多くの人が、「感情」と戦っているつもりで、実は**“感情を感じたくない自分”と戦っている**ことがあります。
これは臨床の現場でもよく見られる現象です。

たとえば、こう言ってみてください:

「私は今、不安を感じている」
「イライラしていて、何かから逃げたくなっている」

それだけで、感情が少し“扱いやすい大きさ”になり、脅威ではなくなっていくのです。
名前をつけるだけでも、距離が取れるようになります。

マインドフルネスは、感情に“居場所”を与えるもの

マインドフルネスは、感情を消すためのテクニックではありません。
むしろ、「今ここにある自分の感情に気づき、スペースを与える」ための実践です。

「今、不安を感じているな」
「胸の奥がつまっているな」
そんなふうに、自分の内側にそっと目を向けてあげること。

それはまるで、感情に「君がここにいるのは知ってるよ」と伝えるような行為です。
この“気づき”の瞬間が、アディクティブな行動のサイクルを断ち切るきっかけになります。

感情は、大切な“メッセンジャー”

ネガティブな感情は、つらく、厄介に感じるかもしれません。
でもそれは、あなたにとって「何かが大事であること」を伝えようとしている内なるメッセンジャーでもあるのです。

「大丈夫、感じても死なない」
「感じないふりの方が、実は苦しいから」

そう自分に優しく声をかけてあげてください。
“感じる力”は、生きる力でもあります。

さいごに:小さな問いかけをどうぞ

あなたがいま、一番感じたくない感情はなんでしょうか?
その感情を感じないようにするために、何をしていますか?
その感情に名前をつけるとしたら?
もしその感情があなたに話しかけてくるとしたら、何を伝えてくれると思いますか?