【事例紹介】済生会の心理職向け研究会でマインドフルネス研修を実施〜全国規模の医療機関で、心理職のセルフケアと支援力向上を目的に開催〜

ストレスマネジメントやセルフケアの方法として注目を集める「マインドフルネス」。近年では、医療機関や企業の中でも、心理的安全性の向上やバーンアウト予防を目的に、法人向けマインドフルネス研修の導入が進んでいます。

今回は、全国に病院や福祉施設などを展開する社会福祉法人恩賜財団済生会の心理職を対象とした研究会にて、マインドフルネス心理臨床センター(CMAP)が行った研修事例をご紹介します。

実施の背景

済生会は国内最大の社会福祉法人であり、そのスケールメリットを活かした多施設共同での取り組みも盛んです。そうした取り組みの一つが済生会心理職研究会です。同研究会では全国の済生会組織で働く心理職同士がスキルアップや情報交換を行っており、今回のマインドフルネス研修もその一環として実施されました。もともとマインドフルネスに関心を持つ声が複数あり、「いずれは現場の同僚や患者さんに伝えられるようになりたい」という思いがある中、まずは心理自身が日常で実践し、体感を深めることを目的に実施されました。

研修を依頼するにあたっては、

代表が臨床心理士・公認心理師で“心理職”としてのバックボーンがあること。海外で直接研修を受けて資格取得した上で、その実践を臨床心理の専門誌に投稿するなど本邦の心理臨床領域におけるマインドフルネスの応用に先駆的な取り組みを重ねてきていることからマインドフルネス心理臨床センター(CMAP)にご依頼をいただきました。

研修プログラムの概要

研修は、2025年2月14日から3週連続で全3回、各回2時間で開催されました。

形式はオンラインで、リアルタイム配信と録画配信の両方に対応。リアルタイムには約15名、録画視聴に約20名の心理職が参加されました。

プログラムは、呼吸に意識を向ける基本のマインドフルネス瞑想、食べる瞑想(マインドフル・イーティング)、衝動を乗りこなすための瞑想、セルフ・コンパッションの実践など、日常に取り入れやすい内容で構成されていました。講師は、CMAP代表で心理職としての現場経験も豊富な小林が担当し、研修期間中はSlackを活用し、参加者同士が気づきや実践の工夫を共有できる環境も整備されました。特にSlackでのコミュニケーションは、実践の継続を後押しすることにつながったようです。

参加者の声と得られた反響

今回は、参加者アンケートとともに、研修を企画・受講した心理職の方にヒアリングを行わせていただき、現場のリアルな声を伺いました。

「職場の朝のミーティングに“3呼吸瞑想”を取り入れた」、「寝る前にボディスキャンをするようになった」、「昼食時にスマホを手放して、食べる瞑想を実践。何を感じているか、丁寧に観察するようになった」といった声をいただき、それぞれが自分に合った方法で日常にマインドフルネスを取り入れ始めている様子がうかがえます。「まだ習慣化までは至っていないが、重要なエッセンスを学べたことで、日常の中で自然に実践できている」といった反応もあり、無理のない取り組み方が評価されました。また、「以前は腹式呼吸にこだわって患者さんに指導していたが、“自然な呼吸でいい”という考え方に切り替わった」「支援に活かせる“伝える引き出し”が増えた」との声も。自分自身で体験したからこそ気づけた視点や、支援の幅の広がりも実感されていました。

今後の可能性

今後、「実践を続ける中で、“誰かに伝えたい”“支援に使いたい”という気持ちが湧いきたとき、自分が何を理解しておくべきか、どこを強化すべきかが明確になるような“次の学び”があると、さらに動機づけになるかもしれない」と、次のステップに進むための学びへの期待もお聞かせいただきました。

本格的な8週間プログラムはハードルが高いという声もある一方で、今回のようなコンパクトな研修をきっかけに、段階的に学びを深めていくスタイルは、忙しく働きながら学びたい方々からも高い関心が寄せられています。心理職自身がまずは自らの心身を整え、実践を通じて得た体験を、将来的には周囲のスタッフや患者さんに自然な形で伝えていく。そうした流れが、現場の支援力向上や、より温かな組織づくりにつながる可能性を感じさせる取り組みとなりました。