依存症・アディクションへのおすすめの認知行動療法グループ(集団)治療・支援

はじめに

 アルコール・薬物・ギャンブル・ネット・過食・買い物・喫煙などを減らしたい!やめたい!と思っているのに、自分一人ではなかなかむずかしいと感じている方も少なくないのではないでしょうか。そこで今日は、依存症・アディクションにおすすめのプログラムを2つ紹介します。

SMARPP(スマープ)

 1つ目のプログラムはSMARPP(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program)です。SMARPPは認知行動療法という心理療法の考え方を基本とした、薬物やアルコールの使用に問題を抱えた人のためのプログラムです。

 セッションは週1回、約90分、1クール24回で行われます。SMARPPは、どのような時に渇望(依存行動を行いたいという強い気持ち)が生じやすいのかという「引き金」を見つけること、今後はどう対処すれば再使用を防止できるのかといった対処スキルの習得に重点を置いたプログラムです。

 SMARPPを基としたプログラムは全国の医療機関や精神保健福祉センターなど多くの機関で実施されており、利用しやすいという点でもおすすめのプログラムといえます。

 しかし、依存症・アディクションからの回復のためには、再使用という行動だけでなく、自己の尊重や生き方の回復も考える必要があります。そんな時におすすめのプログラムが、次に紹介するMBRPです。

MBRP

 MBPR(Mindfulness-Based Relapse Prevention for addictive behaviors)は、薬物やアルコールだけでなく、ギャンブル、ネット、過食など幅広い依存行動を対象としています。MBRPでは瞑想練習を含むマインドフルネスと、これまでの認知行動療法的な技法(引き金の特定や対処スキルの習得)を組み合わせたプログラムです。従来のプログラムとは異なる視点からアディクションに取り組むアプローチとして、現在注目を集めています。

 セッションは週1回、約120分、1クール8回で行われます。MBRPでは、マインドフルネス瞑想などを通して、自分が持っている「本当はアディクションではなく、何を必要としているのか」という根本的なニーズに気づくことに重点を置いています。それによって、感情に流されるのではなく、落ち着いてアディクションの背景にある生きづらさや渇望に対応できるようになります。

 海外ではすでにその有効性が証明されているMBRPですが、日本で実施可能な機関は限られています。そのようななかで、当センターは日本初の実践報告を含むMBRPに関する2つの研究が学術雑誌に掲載されるなど、日本でエビデンスのあるMBRPを実施可能な数少ない機関として、今後もMBRPの普及・啓発・研究に邁進していきます。

参考文献

ボーエン・チャウラ・マーラット 檜原広大(訳)(2016).マインドフルネスに基づく嗜癖行動の再発予防 日本評論社

小林亜希子・石黒香苗・高橋郁絵ほか(2020).マインドフルネスに基づくアディクションの再発予防プログラム(MBRP)~依存症回復施設利用者を対象とした予備的実践報告~ 日本アルコール関連問題学会雑誌,22,107-113.

菊地 創・小林亜希子・石黒香苗ほか(2022).Covid-19 影響下におけるオンライン MBRP(Mindfulness-Based Relapse Prevention for addictive behaviors)実施の試み 日本アルコール関連問題学会雑誌,23,35-40.

松本俊彦(編)(2016).やさしいみんなのアディクション 金剛出版

松本俊彦・今村扶美・近藤あゆみ(編)(2022).SMARPP-24 物質使用障害治療プログラム[改訂版] 金剛出版

当センターでのMBRPの実施は2022年12月からです。