2023年度アルコール・薬物依存関連学会にて、「アディクション支援・治療にまつわるグリーフケア」のシンポジウムで発表しました

2023年度アルコール薬物依存関連学会(岡山コンベンションセンター)にて、シンポジウム、「アディクション支援治療にまつわるグリーフケア」で、マインドフルネスや当事者のグリーフケアについて話してきました。会場は、満員で関心の高さうかがえました。

シンポジウムは、座長が、長先生、射場先生、シンポジストが安東先生、大江先生、入来先生と小林でした。

上左から、長先生、射場先生、下左から安東先生、小林、大江先生、入来先生

それぞれの立場から、患者さんの自死にどう向き合ったかという話や、クリニックではどうグリーフをプロセスしているかといったお話が話されました。

グリーフケアとマインドフルネスについて話してきました。最後に、グラウンディング瞑想も行いました。マインドフルネスに関心を持ってくださる方もらっしゃって、嬉しく思いました。(入来先生撮影)

以下に抄録を掲載します。

【抄録】

タイトル「グリーフケアとマインドフルネス」

マインドフルネス心理臨床センター 小林亜希子 

 依存症支援に関わっていると患者の自死、事故等に遭遇する可能性があり、周囲の援助職においても、このようなグリーフを体験した例は多い印象がある。

 このような状況において、援助職が燃え尽きることなく、グリーフをしっかりプロセスし、また乗り越えて支援を続けるためには、グリーフケアをしっかりと行っていくことが必要である。しかし、実際は、日々の業務の忙しさに加え、また自死や事故にまつわる業務にも忙殺され、支援者自身のメンタルヘルスや、グリーフケアをしっかりと行う機会はあまりないような印象がある。

 エリザベス・キューブラー・ロス博士が1969年に述べたように、グリーフとは喪失に対する感情的反応である。この感情反応は、否認、怒り、駆け引き、抑うつ、受容を含むさまざまな段階の感情状態として概念化されている。

 たいていの場合は死別や結果に適応し、最終的には生活を再確立することができる。しかし、少数のケースでは、悲嘆が複雑化し、深刻な結果が現れ、精神的・身体的健康に影響を及ぼすこともある。グリーフのプロセスは、さまざまな段階や課題に分けられる。グリーフ過程への適応において、実行すべき課題は以下の通りである: 1)喪失の現実を認識する、2)痛みに心を開く、3)意味の世界を見直す、4)失われたものとの関係を再構築する、5)自分自身を再発見する(Neimeyer R., 2007)。

 マインドフルネスとは、今この瞬間の体験を、価値判断せずに、そのまま受け入れることである。マインドフルネスの実践を通じ、今、この瞬間の、身体感覚、感情や、考えを否認せずに気づくことができるようになる。そして、その背後にある自身のニーズに気づき、自然と癒やしや全体性の獲得にむかって成長することができるようになる。マインドフルネスは、現実を穏やかに受け入れるマインドフルな態度と思いやりの要素を通して、上記にあげたグリーフのプロセスすべてに取り組むことを可能にしてくれる(Worden J. &El tratamiento del duelo, 2013)。そのため、依存症臨床に従事する支援者が、マインドフルネスを実践することは、グリーフケアの一貫としても有効である。

【略歴】

2019年 マインドフルネス心理臨床センター

2019年 MBRP(アディクションのためのマインドフルネス再発予防)講師

2022年 MSC(マインドフル・セルフ・コンパッション)講師

2023年 MBSR(マインドフルネスストレス低減法)講師 

【著書】

2022年 小林亜希子・小林桜児著 『やめられない!を手放すマインドフルネス・ノート』 日本評論社