インタビュー記事:オランダから長野への移住!どうセルフ・コンパッションを日常で用いているか
セルフ・コンパッションを実践するなかで、オランダから長野への移住を決断されたMSC講師の竹内さん一家。今回は、その顛末をインタビューすることで、セルフ・コンパッションがどう決断にいかされているかについてみていきたいと思います。
なぜ移住を決めたのか?
Q:なぜ、オランダから長野へ移住してみようと思われたのですか?その決断は、セルフ・コンパッションの実践は、どのように影響をあたえましたか?
最近、オランダから長野県に家族でUターンされているということですが、理由を教えてください。
A:2022年の頭に、山村留学のことを知り、自然豊かな場所で暮らしてみたい、子供達にも良い経験になるのではと思い、山村留学をする予定で2023年7月に帰国しました。
しかし、いざ来てみると、様々な要因が重なり山村留学をする予定だった村に、家族で住める居が無くなってしまいました。転入後直ぐに子供達を保育園に預けて仕事を続ける予定が、住む場所も保育園もなくなってしまいました。
これが路頭に迷うということなのかと思いながら、手持無沙汰の子供達の相手をし、役所対応から電話契約等、ライフラインを整えることに必死でした。私が真ん中に入り、それぞれの方向にそれぞれの言語で異なったシステムを説明して仲介し、気付けば常に人の対応をしていて、体力もワーキングメモリーも心もパンク寸前でした。
子育てでは滅多に怒らなかったのに、怒ってばかりで、長男が怖がっているのに気づいては、何をしているんだろうと自己嫌悪に陥っていました。また、夫との会話は全て自分への要求のように思われて、質問をされるだけでもイラっとしていました。
そして、ある日、子供達と夫、解決すべき山だらけの問題を置いて、一人で逃走しました。マッサージに行き、カフェで一人でお茶をして、呼吸を整え、夕方戻りました。セルフ・コンパッションを学ぶ前の私だったら、問題が山積みの状況において、休むなんてあり得ない行動でしたが、今の私には休息が必要であること、そして何より私も休んでも良いことを体験してきたからこそ、取れた行動でした。
本当はもっと休みたかったのが本音ですが、短い休息でも、身体と心は大分休まり、クリアになったワーキングメモリーでまた、山積みの問題に向き合い始めることができました。その後も何回か逃走して、行動としてのセルフ・コンパッションを実践しながら、生活を整えていきました。
結局、現在は実家がある長野県松本市に住んでいます。自然の中で実践したいなとか、気軽に自転車に乗ってキャンプに行ける場所に住みたいなとか、畑をやってみようかなとか、今まで住んでいた家よりも大きな家に住みたいなと夢見ていたのですが、松本市で借りた家は、面積はオランダで住んでいた家の半分ほどで、実際に住んでみると車の通りが多く、自然もそれほどないし、畑なんてないし、保育園もないし、住み始めた当初はガッカリし、何しに来たんだろうとか、周りに何を言われるのだろうとか、もっと念密な計画をすべきだったのではとか、批判的な声が出てきました。
セルフ・コンパッションがあったからこそ乗り越えられた
セルフ・コンパッションで学んだ難しい感情との付き合い方を実践しながら、日々過ごし、そして、ある時ふと思いました。思い通りに行かないのが人生だけれども、せっかく来たんだから、少しの間挑戦してみようと。上手く行かなかったらオランダに戻れば良いし、全力で新しい生活を楽しんでみよう。落胆している自分自身に、コンパッションを持って寄り添えたからこそ、前を向いて歩く力が、自然と湧いてきたのでした。
現在は、私たち家族らしい生き方を模索しています。新しい環境に身を置くことによって、性格やコミュニケーションスタイルを含め、自分の習慣が明確し、短所を見直すきっかけになっただけでなく、互いの良いところ、それぞれが大切にしていることを再確認する事につながりました。そしてそれは、私たちがどう生きていきたいのかということを見直すきっかけにもなっています。
例えば、コミュニケーションの仕方、パートナーシップのあり方、仕事、日々の暮らし方を見直し、勉強し、話し合い、自分自身や周り・環境に優しい生活方法を試行錯誤しながら探っています。
2022年に思い立った山村留学がきっかけとなった長野県移住。この決断に対しては、応援してくださった方も多くいましたが、驚かれることもあり、「そんな理由でご主人が仕事を辞めたの」といった批判的なコメントをもらった時もありました。
確かに、いわゆる社会で期待されているような生き方には沿わないかもしれません。しかし、これが私たち家族の生き方であり、私たち家族らしい生き方です。その為の社会人・親・夫婦としての責任を果たし、私たちが取れるリスクを考慮し準備して来ました。
もちろん、人間なので完ぺきではありません。現在も毎日試行錯誤しています。しかし、それが人間であり、人生であり、失敗を繰り返しながら、私たちらしい生き方を模索していけば良いと思っています。
セルフ・コンパッションを学ぶ前は、失敗に対する恐れ、社会の目・評価に対する恐れ、不安等様々なネガティブな感情を抱え、生きづらさを感じていました。今もゼロとは言えませんが、それらを包み込むセルフ・コンパッションに出会えたからこそ、自分らしく生きる為の勇気と力を得られ、現在も日々チャレンジしています。
日本人はどうしたらもっと楽に生きられるでしょうか?
日本人は、滅私奉公ともいいますように、仕事のためにかなり頑張るところがあるように見受けられますが、オランダから帰国されてみて、またコンパッションの立場から、日本人への「こうしたらもっと楽にいきられるのに」というアドバイスはありますか?
日本人は自分にも厳しいですが、他人にも厳しいと感じています。自分も歯を食いしばっているのだから他人も頑張るべきだとか、これくらいのことはできるはずであるとか、自分にも他人にも高い要求をする傾向があると思います。完璧なものを届ける為に必死に仕事をし、失敗すれば相当な避難を受ける為、間違いを回避する努力がありとあらゆるところでされているように感じられます。
しかし、失敗こそ学ぶ機会であり、自分自身、社会を成長させてくれるものです。
他人又は自分の失敗を許すためには、まずは自分自身に優しさ、思いやりを向けることが必要です。セルフ・コンパッションを向けられるようになった時こそ、心に余裕ができ、間違いと真正面から向き合い、責任ある行動が取れます。
また、間違えた自分を必要以上に追い詰め無くなった時、失敗に対する恐れが減っていきます。そうすると、新しいことや好きなことにチャレンジできるようになります。仕事だけでなく、趣味やプライベートにおいても、様々なことにチャレンジできたら、もっと楽しく、自分らしく、楽に生きられると思います。そして、一人一人が自分の強みを生かして社会貢献できれば、様々な分野において社会が発展していくと思います。(竹内広恵)
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