ケアギバー対象の「マインドフル・セルフ・コンパッション(MSC)」全2回講座に参加してみての学びと変化
マインドフル・セルフ・コンパッション全2回講座受講の記録
当センターで事務を担当させていただいている小澤です。日々子育てに奮闘する中、昨年12月10日と17日に開催されたケアギバー対象の「マインドフル・セルフ・コンパッション(MSC)」全2回講座に受講生として参加しました。このコラムでは、受講を通じて得た気づきや感想を簡単にまとめさせていただきます。セルフ・コンパッションに興味がある方やケアギバーの皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。
育児と燃え尽き症候群
2歳の息子を育てる日々は、小さな成長に喜びを感じる一方で、想像以上に心身のエネルギーを消耗するものでした。自己主張を始めた2歳児の「イヤイヤ期」には振り回されることも多く、イライラが募る中で、それでも常に息子とともに過ごし、自分自身のことを後回しにする毎日が続いていました。
例えば、子どもの寝ぐせはすぐに気づいて直そうとするのに、自分は左右違う靴下を履いていても気づかなかったり、息子の飲み物には気を配るのに、自分は朝からほとんど水分を摂らず、昼過ぎになってようやくのどの渇きに気づくような日々…。いかに自分を後回しにしているかにハッとさせられることがたびたびありました。
「母親だから当然」という無意識の思い込みが私を縛り、受講前は、気づけば眠れない日が多くなり、気分の浮き沈みが激しかったり、何も手につかないような疲労感に襲われるようになっていました。そんな私の影響を受けたのか、息子もまた機嫌が悪いことが多かったように思います。
そんな中、当センターでケアギバー対象のMSC講座が開催されることを知り、「この状況を変えたい、これ以上は無理だ、自分の時間が必要だ」と強く感じて、夫に協力をお願いし受講を決意しました。
講座での学び・気づき
講座では、まず「セルフ・コンパッションとは何か」という理論的な解説があり、その後、実践的なワークが行われました。初めに、自分の困りごとを振り返る中で、私は「燃え尽きている状態」にあることに気づきました。しかし、その瞬間、「こんな自分ではダメだ」と自分を責める気持ちが湧いていました。そんな私にとって、「燃え尽きは人間の弱さではなく、人間である証です」という講師の言葉を受けて、自分を責めるのではなく受け入れることで、心がふっと軽くなるのを感じました。
特に印象的だったのは、内なる自己否定の声と向き合うワークでした。自己否定の声を実際に書き出してみると、その言葉の厳しさに驚きました。しかし、その声には「私を守りたい」という意図があったことに気づき、「これまで私を守るために最善を尽くしてくれてありがとう」と自分に感謝の気持ちを向けられるようになりました。この経験は、私にとってとてもあたたかい気づきでした。
セルフ・ケアの実践
日常生活にセルフ・コンパッションを取り入れるワークでは、自分が既に行っているセルフケアを振り返る時間がありました。その中で、自分が今何を必要としているのかを意識しながら、新たなセルフケアを取り入れる大切さを実感しました。
これまで、特別な予定がない限り自分の時間をとることができていなかった私にとって、このワークは大きな転機となりました。今では、短い時間でも自分をいたわる行動を意識的に実践しています。
また、“あえて何も予定を入れず、かつ自分だけの時間を取る日”をスケジュールに組み込むことにしました。この日があるだけで、日々の心持ちが全く違います。楽しみが気持ちを明るくし、さらに行動のメリハリができ、心に余裕が生まれ、子どもや夫への感謝の気持ちが湧き、家族に対して穏やかに接することができるようになったと感じています。
受講を終えての変化
まず、夜寝る前と朝起きた時に、深呼吸をして、ほんの数分でも自分の状態・感覚に意識を向けていたわる時間をとるようになりました。そのちょっとした時間があるだけでも、夜は眠れるようになり、1日の始まりが穏やかになります。時には朝から息子の泣き叫ぶ声が響き渡ることもありますが、その時間があるだけで、受けとめ方に余裕ができたように思います。
また、夕方から夜にかけて疲れがたまる時間帯。以前は、息子のイヤイヤにイライラが爆発し、大声を上げてしまうこともありました。しかし、今では一呼吸おいて、心の中で(時には声に出して)「今日も自分は頑張っている。疲れてくるよね」とつぶやくようにしています。すると、不思議と気持ちが落ち着き、「息子も疲れているんだよね」と思える余裕が生まれました。その結果、私は穏やかに息子と向き合うことができ、彼も落ち着きを取り戻し、穏やかな表情になっていきます。このような小さな変化が、家族との時間をよりあたたかいものにしてくれていると感じました。
この経験を通じて感じたのは、「自分をいたわることが、家族や周囲の人を大切にする第一歩になる」ということです。他者を支えるためには、まず自分自身が心に余裕を持つことが何より大切だと実感しました。
最後に
この講座は、保護者や医療・福祉関係者など、日々他者のケアに携わる方々にとって、燃え尽きを予防するためにも必要な内容だと感じました。講座で学んだスキルは一度で完璧に身につくものではありませんが、日常生活に少しずつ取り入れることで、心の余裕を取り戻し、活力を生み、周囲にも良い影響を与えることができると思います。
もし、日々の忙しさの中で「自分を後回しにしている」と感じている方がいれば、この講座は新しい視点を提供してくれるかもしれません。他者に優しくするように、自分にも優しくしてみませんか?
支援職として働く皆様、また、セルフ・コンパッションにご興味・関心がある皆様、近日開催予定のセルフ・コンパッションに関連する当センターの講座は以下です。
よろしければご参加くださいませ。
◎2025年1月14日(火)20:00開催「NPO法人化記念イベント 臨床に活かすマインドフルネス&セルフ・コンパッション座談会」
https://npoevent20250114.peatix.com/view