医療従事者がマインドフルネスを実践することで得られる3つのメリット

ーーー

この記事は当センター代表で公認心理師・臨床心理士・MBRP講師・MSC講師(trained teacher)・MBSR講師(qualified teacher)である小林亜希子が、医療従事者向けに2024年7月に実施したセミナー「医療従事者がマインドフルネスを実践することで得られる3つのメリット」の内容を元に作成しております。

ーーー

 マインドフルネスに関する研究論文をPUBMEDで文献検索すると、その効果を裏付ける多くのエビデンスが確認できます(2023年には3693本)。マインドフルネス瞑想の習慣化には、ストレスの低減や集中力アップ、人間関係の向上、より良い判断ができるようになる、柔軟性や革新性が高まる、不安や抑うつ改善、免疫力アップなど、様々な嬉しい効果があります。また、本人だけでなく周囲の人のウェルビーイングも高まります。

 本記事では、特に医療従事者に焦点を当て、マインドフルネスを取り入れることで得られる3つの大きなメリットについてご紹介します。

マインドフルネスの実践で医療従事者自身が得られるメリット3つ

メリット1. 燃え尽き予防とストレス軽減

医療の現場は常に高いストレスにさらされており、特に新型コロナウイルス感染症の流行以降、医療従事者が心身の限界に達し「燃え尽き症候群」に直面することも増えています。「燃え尽き症候群」とは、極度の感情的疲労、シニシズム(離人感)、そして達成感の低下を特徴とする職業病です。アメリカでは、医師の5人に3人が燃え尽き症候群の症状を訴えるなど、その深刻さが注目されています。マインドフルネスの実践は、この燃え尽きに対する予防策として効果的です。

 また、人間はストレスを察知すると「戦う・逃げる・固まる」といったサバイバル反応を起こしますが、それが不適切な対処法(働きすぎ、食べ過ぎ、スマホやカフェインギャンブルなど依存)に繋がっていきます。その結果、心だけでなく、体の方の健康状態も悪化してしまいます。マインドフルネス瞑想により、自分の過覚醒状態に気づき、心身のバランスを取り戻すことで、幸福感や人生の満足度が向上します。

 実際に、医療従事者を対象に実施した研究では、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)はストレスの軽減とQOL(生活の質)の向上に有効であることが示されました。また、短期のマインドフルネス介入でも、仕事への満足度や共感力が向上し、ストレス管理能力も高まるという結果が得られています。

メリット2. パフォーマンス向上と患者ケアの質の向上

現代は、テクノロジーの発達で刺激だらけ、かつマルチタスクになりやすい環境で、人間の集中力は低下していっています。そのような中でも、医療の現場では、集中力と迅速な判断が必要不可欠です。マインドフルネスの実践で、注意力を高め、感情のコントロールができるようになることで、医療従事者がより良いケアを提供できる環境を整えます。患者さん一人ひとりに集中し、相手の話に共感を持って耳を傾ける姿勢が身に付き、対人関係がより協力的かつ調和的になることでケアの質を高めることができます。

3. 進化・変容(古いものを捨てて生まれ変わる。優しさ・思いやりが生まれる)

マインドフルネスは、医療従事者が変化や新しい状況に適応する力、もはやうまくいかないことを手放し、より効果的な選択肢を生み出す能力を養います。というのも、瞑想をしていると、うまくいっていないということに気づくようになるからです。また、マインドフルネスは、仕事、役割、組織という形の古い世界が終わりを迎えるときに直面する喪失を悼むのに役立ちます。新しい可能性を探求し、古い信念、アイデンティティ、思い込みを捨て、新しいものを創造するスペースを作るために前進するのに役立ちます。

患者さんへマインドフルネスを教えるメリット

 マインドフルネスは、うつ、慢性疼痛、不安、免疫機能の向上、不眠、ADHD、アディ クション等への効果にエビデンスが示されているため、患者さんのメンタルヘルスの向上に寄与します。実際に、マインドフルネス認知療法(MBCT)は、うつ病の再発予防効果が実証されたことにより大きな注目を集め、イギリスでは費用対効果の見込める予防プログラムとしてNICE(国立医療技術評価機構)によって推奨されています。職場でマインドフルネスを教えられる環境を整えることで、患者・クライアントの双方のQOLを向上させる可能性があります。マインドフルネスを対人援助職が習得することの恩恵は、健康、思いやりやコンパッションが増加することからも患者さん・医療従事者・および職場の人間関係に反映される。三方よしといえます。

エビデンスがあるプログラムを学ぼう

 エビデンスがあり世界で提供されているマインドフルネスプログラムについては、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)、MBCT(マインドフルネス認知療法)、MBRP(依存のためのマインドフルネス※MBRPは通常治療よりも効果があると言われています。)MSC(マインドフル・セルフ・コンパッション)がありますが、マインドフルネスを教えたい人は、まずはご自身がMBSRを受けるのがおすすめです。

 当センターでは支援者向けの本格的な講師養成プログラム・研修を実施している他、MBRP-RAというMBRPの簡略版(途中からも参加できる)プログラムなども提供しております。MBRP-RAでは、実際に病院でスタッフさんが簡単な瞑想を患者さんへ教えられるようになります。

11月21日(木)には、ご質問・ご要望が多い「支援職が知っておきたいマインドフルネスの効果・禁忌」オンラインセミナーを開催予定です。

詳細は下記ページをご一読ください。

https://mindfulness202411.peatix.com/view

 当センターでは様々なセミナーを開催しておりますので、よろしければPeatixで当センターページをフォローして最新情報をチェックしてみてください。