新刊紹介「マインドフル・セルフ・コンパッション プラクティスガイド」&セルフ・コンパッションって難しいですよね!
新刊「マインドフル・セルフ・コンパッション プラクティスガイド」を出版します
この度、「マインドフル・セルフ・コンパッション プラクティスガイド」を星和書店
より出させて頂きます。富山在住の臨床心理士・公認心理師の山藤奈穂子さんと一緒に訳
させて頂きました。大好評 マインドフル・セルフ・コンパッション・ ワークブックと対をなす本です。
原著 ” Teaching the Mindful Self-Compassion Program: A Guide for Professionals”(Guilford, 2019)刊行から3年かかりましたが、無事にここまでこぎ着けられたことに心から安堵しています。
MSC 8週コースの説明を中心に、セルフ・コンパッションを教えることについて詳しく書
かれています。臨床でコンパッションを使いたい方はもちろん、日々プラクティスをされ
ている方にとってもとても役に立つものと思います。
インクアイアリーの紹介
この本の特徴の1つは豊富なインクワイアリー例が挙げられていることです。インクワ
イアリーとは各セッションのプラクティス後に行う参加者と講師との相互的なやりとりで
す。参加者に気づきをもたらすきっかけになるだけでなく、参加者1人とのやりとりが全
体に響き渡ることもある大切なものです。
このインクワイアリー例を読むとセルフ・コンパッションをグループで教える時だけでなく、心理臨床やカウンセリングでクライアント・患者と一緒に行う際の参考にもなります。
セルフ・コンパッションのプラクティスが難しいという声はよく耳にします。確かに一
瞬できたように思えても、日常的には簡単ではありません。そういう人がいたらどうする
だろうかと、これまでの経験を元に架空のインクワイアリーを考えてみました。
P:参加者
T:MSC 講師
P:「プラクティスが難しくて、なんだかうまくいきません」
T:「正直に話してくださってありがとうございます。そうですね・・・それはこんな感じ
ですか・・・ ああ、ダメだ、ムリだ、ヤーメタ! みたいな(笑)?」“ ”
P:「はい、そんな感じです(苦笑)。ムリだよ、こんなの、みたいな・・・」
T:「おっしゃる通りですね。プラクティスを続けるのは本当に難しいです。同じよう
に難しいという方は、このグループでどのくらいいらっしゃいますか(参加者に手を挙げ
てもらう)?ああ、こんなに多いですね(笑)。これ、共通の人間性です。みなさんも難
しいですね(参加者の多くが頷く)」
P:「はい、それはわかるんです。でもなんだか自分がダメなように見えて・・・」
T:「プラクティスができないと、そう感じますよね。自分 だけ がダメなように。ま“ ”
さに自分が一人ぼっちに思える・・・孤独な自己批判ですね。あなたはそれに気づいてい
らっしゃる。これはとても大切なことです」
P:「ですね・・・自己批判してしまう自分がまたイヤになる・・・」
T:「そうですよね、悪循環のよう。本当にコンパッションのプラクティスって大変です。ここでもしできそうならやってみて欲しいのですが、あなたの大切なお友だちがこういう状況だったら、あなたはどんなふうにどんな声をかけますか?」
P:「(穏やかに)アレ、難しいよね、大変だよね・・・」
T:「そう、穏やかに優しく声をかけますね。もしご自分に同じことを語りかけるなら、
どんな感じがしますか?これ、できそうでしょうか?」
P:「うーん、なんとなくモヤモヤします。」
T:「そのモヤモヤ感を身体のどこかで感じたりするでしょうか?例えば喉とかお腹と
か・・・?」
P:「うーん、わからないけど・・・胸のあたりですか・・・なんだかヘンな感じがするか
も」
T:「では胸に手を置いてみてください。慈しみのある呼吸をできるでしょうか・・・よかったらみなさんもご一緒に・・・ご自分のペースで穏やかに・・・吸って・・・吐いて・・・(少しの間続ける)・・・今、どんな気分ですか?」
P:「ええ、少し穏やかになってきました・・・」
T;「今、プラクティスが難しいというご自分にどう声をかけますか?」
P:「 まあ、そんなものだよ。ゆっくりやろうか・・・ みたいな言葉でしょうか」
T:「今はどんな気持ちですか?さっきと変わったことはありませんか?」
P:「少し楽になりました。これだと少しやれるかもしれません。」
T:「そうですね。ほんの少し、ゆっくりでいいのです。それで十分ですね。ご一緒にできて素敵な時間でした。ありがとうございます。何か他にお話しはありますか?」」
P:「ありません。大丈夫です」
T:「ありがとうございました」
いかがでしょうか。プラクティスガイドにはこうした例が豊富に記されています。プラ
クティスが難しいとき、例えば呼吸や身体の感覚を手がかりに、それに気づきただ穏やか
に受けとめてみると少し変わるかもしれません。いやそんなに変わらなくてもいいんです。
そう、簡単には変わらないですよね。でもそれで十分です(穏やかに呼吸して・・・)。ま
さにそれこそマインドフルでコンパッション豊かな態度なのですから・・・
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中央大学文学部心理学専攻 教授 公認心理師・臨床心理士 早稲田大学大学院人間科学研究科健康科学専攻修士課程修了 同 博士後期課程満期退学 これまでに国立精神・神経センター精神保健研究所流動研究員・特別研究員、東京都公立学校スクールカウンセラー、関西大学准教授・同教授などを歴任 博士(人間科学)(早稲田大学) 2013年より現職
2021年 MSC 講師(Trained Teacher)趣味:クラシック音楽(現在は鑑賞のみ。学生時代は大学オケのホルン奏者でした)