マインドフルネスの海外プログラム The Institute of Meditation and Psychotherapy(IMP), Certificate programを終えて(石黒香苗)

マインドフルネス心理臨床センタースタッフの石黒香苗が、海外の素晴らしいマインドフルネスプログラムを終えたので、ご報告させていただきます。本プログラムを修了したのは、日本人では石黒が二人目です。

 

The Institute of Meditation and Psychotherapy(IMP), Certificate programを終えて

【IMPのCertificate programとは?】

心理士をはじめ、医療従事者対象の9か月のマインドフルネスの資格プログラムです。母体となるのはアメリカのCenter for Mindfulness and Compassion(CMC)とハーバード大学医学部精神科です。9か月間にわたって、約40名の参加者(ほぼ医療従事者、70%アメリカ人、30%ほどそのほかの国から)と一緒にマインドフルネスの学びと体験を深めていきます。主な軸は以下の3つです。

  • 週1回のオフィスアワー

週1回2時間オンラインで集まります(オフィスアワー)。各回、ゲストスピーカーが来ます。週1で集まる前に、そのゲストスピーカーによる講義の動画と関連する様々な論文や参考資料が配布され、各自、事前に予習をします。オフィスアワーでは、ゲストスピーカーが一方的に講義をするのではなく、参加者たちが動画や資料に関してゲストスピーカーにコメントや質問をして、議論を深めていく、といった流れになります。

ちなみに、ゲストスピーカーは、マインドフルネス業界の中で、先駆者として活躍している臨床家・研究者の人々が来てくれるので、学びことが多く、毎回贅沢な時間だなぁ・・・としみじみ感じていました。

例:(2020年度)

・Chris Germer,トピック:Self-Compassion in Clinical Practice

・Ron Siegel, トピック:Fitting the Practice to the Problem

・Jud Brewer, トピック:Craving to quit: Breaking the Addictive Loop

などなど・・・

 

  • 1か月に1回ほどのスモールグループ

この講座では、「体験」がとても重視されるため、9か月間、マインドフルネスの練習を続けることが望まれます。40名の参加者が4つのグループに分けられ、月1くらいで集まり、そこでは、日々の練習の振り返りや体験の共有をみんなで行います。ファシリテーターの元、瞑想の体験による気づきだけでなく、医療従事者としての苦しみやそれに対するマインドフルネスの役割、それぞれの人生に起こる苦楽、様々なことをシェアし合うことで、仲間同士、この9か月間をサポートし合います。

 

  • 2回のリトリート

プログラムが始まる前と、プログラムの最後に計2回リトリートがあります。2020年度はどちらも残念ながらオンラインでしたが、いつもは直接アメリカで集まるようです。このリトリートはファシリテーターの先生たち、参加者たちと交流を深める大事な時間となります。

【9か月のプログラムを終えて】

この9か月、何よりも印象的だったのは、個人的なマインドフルネスの体験の深まりとコミュニティーの存在の大きさでした。外国人として、英語も不完全な中このプログラムに参加したため、最初は不安や緊張でがちがちでしたが、ファシリテーターの先生方が作り出す温かく包み込むような雰囲気が、徐々に40人の参加者全体の雰囲気となり、最終的には、マインドフルネスとコンパッションを体現したようなコミュニティーが形成されていったように思います。マインドフルネスの学びの深まりは、このコミュニティーの参加者やファシリテーターの存在なくしてはあり得なかったといっても過言ではありません(それがなかったら知識だけ詰め込んで頭でっかちになっていただろうと思います・・・)。

個人的なマインドフルネスの体験としては、自分が臨床家として、人として、抱えている苦悩、いつもやってくるしんどさがよりはっきりと見えるようになり、それに対して不快感や見たくなさを感じながらも、どうやったらそれらと一緒にいられるのか、丁寧に温かく抱えてあげることはできるのか、試行錯誤した9か月でした。「楽しんで、遊び心を持って、いろいろ試してみたらいいよ!」という態度でいてくれるファシリテーターとコミュニティーがあったこと、その「抱える環境(holding environment)」となってくれたコミュニティーから学び、自分自身の内面にも「抱える環境」を作っていけたこと、様々なゲストスピーカーの話から、自分の苦しみにも応用できるエッセンスを得られたこと、等、様々なことが個人的な体験を深めてくれる栄養素となっていたように感じます。

マインドフルネスは、苦しみから解放してくれる魔法でも、万能薬でもない、ということは頭ではわかっていたつもりでした。が、やはり参加前の私は「治療テクニックとしてのマインドフルネス」を知りたがっていました。丁寧に自分と向き合い、コミュニティーの仲間と学び合ったことで、「マインドフルネスは、よりよく生きていくための土壌を耕すことであり、嫌なことや不快感をも抱えて優しく見守る土壌を作っている」ということ、そして、苦しさや不快感は、いつでも来たり去ったりするものなんだ(そしてそれでいいんだ!)、ということが、やっと、やっと、腑に落ちたようです。そして、自分が自分の苦しみとどう向き合い、どう扱うか、ということは、結局は、臨床場面でもクライエントさんとどう向き合うか、ということに反映される、ということにも気づかせてもらった時間でした。臨床家が、自分自身のマインドフルネスの体験を深めていくことの重要性は、まさにそこにあるかもしれません。

 

2021年度のプログラムは2021年9月スタートです。

興味のある方は以下のリンクを見てみてください。

Earn a Certificate

文責:石黒香苗