医療従事者がマインドフルネスを実践することで得られる5つのメリット

医療従事者は、コロナ禍も、その以前も、常にスピードと、緊急性、チームワークなどが求められ、ストレスも高い職場で働いています。

近年、マインドフルネスが医療従事者のストレスを低減し、燃え尽き予防などに一定の効果があることが示されています。この記事では、医療従事者がマインドフルネスを身につけるとはどういうことなのかを解説していきたいと思います。

医療従事者がマインドフルネスを実践することで得られる5つのメリット

はじめに、わかりやすくさまざまな研究で示されている主なメリットを提示していきます。

  1. ストレス緩和:医療従事者は、患者のケアや緊急事態への対応など、ストレスが高い状況に頻繁に直面します。マインドフルネスは、ストレスの軽減や燃え尽き症候群の予防に役立ちます。
  2. 人間関係の向上:マインドフルネスは、感情知能を向上させ、医療従事者が患者や同僚との対人関係をより円滑にするのに役立ちます。これは、チームワークの向上や患者満足度の向上につながります。
  3. 患者ケアの質の向上:マインドフルネスは、医療従事者が患者のニーズに対してより注意深く、共感的になることを促し、患者のケアに対するアプローチが向上します。これにより、治療結果が向上する可能性があります。
  4. ミスの減少:マインドフルネスは、注意力と集中力を向上させることで、医療従事者が診断や治療における誤りを減らすのに役立ちます。これは、患者の安全性と治療効果の向上につながります。
  5. 個人の心身の健康:マインドフルネスは、医療従事者の心身の健康を維持し、ストレスや不安を軽減するのに役立ちます。これにより、医療従事者が仕事に対してより満足し、職業生活のバランスが向上します。

自分自身のストレスや健康状態も改善され、自分自身・他人への許容や思いやりが増し、情動調律もよくなるため、仕事上の人間関係や、患者さんとの人間関係の質も向上する。そして、集中力が身につくため、ミスも減り、意思決定がスムーズに行えるようになる可能性が高いのです。

医療従事者のマインドフルネスの実践についての文献からの知見

Epstein, R. M. (1999). Mindful practice. JAMA, 282(9), 833-839.

ロナルド・M・エプスタイン氏による1999年のJAMAに掲載された論文「Mindful Practice」では、マインドフルネスの概念と医療実践におけるその潜在的な利点が検討されています。論文では、注意、好奇心、今ここに集中していること、自己認識を特徴とするマインドフルな実践が、医療ケアの質の向上、医療従事者の福祉の向上、臨床的意思決定の効果の向上につながると主張しています。

エプスタインは、瞑想、リフレクティブ・ライティング(内省的な文章を書く)、自己認識を発展させることなど、さまざまな技法を通じてマインドフルな実践を養成できると提案しています。論文では、医療実践における不確実性を認識し、それらを認めていく重要性や、患者ケアの文脈で生じる強い感情を管理する必要性が強調されています。

医療実践にマインドフルネスを組み込むことで、医療従事者は注意深く聞く能力、効果的にコミュニケーションを取る能力、新しい情報に対して開かれた態度を保つ能力を向上させることができます。これにより、より良い臨床的意思決定と改善された患者の転帰がもたらされます。また、マインドフルネスを養成することで、医師は自分の職業に伴うストレスや感情的な要求を管理するのに役立ち、全体的なウェルビーイングと仕事の満足度に影響を与えます。

要約すると、エプスタインの論文は医学におけるマインドフルな実践の重要性を強調し、ケアの質を向上させ、臨床的意思決定を強化し、医療従事者の福祉を強化する潜在能力を指摘しています。

Mindfulness-Based Stress Reduction for Health Care Professionals: Results From a Randomized Trial Shapiro et al., 2005

医療分野におけるストレスが医療従事者に悪影響を及ぼし、うつ病の増加、仕事への満足度の低下、心理的苦痛をもたらすという証拠は、文献に数多く存在する。この問題に対処する試みとして、この研究では、短期ストレス管理プログラムであるマインドフルネスストレス低減法(MBSR)の医療従事者に対する効果を調べました。この前向き無作為化対照パイロット研究の結果から、8週間のMBSR介入は、医療従事者のストレスを軽減し、QOLとセルフ・コンパッションを高めるために有効である可能性が示唆されています。

 “Fortney, L., Luchterhand, C., Zakletskaia, L., Zgierska, A., & Rakel, D. (2013). Abbreviated mindfulness intervention for job satisfaction, quality of life, and compassion in primary care clinicians: A pilot study. The Annals of Family Medicine, 11(5), 412-420.

Fortneyらによる2013年の論文「プライマリケア医師における職務満足、生活の質、および共感心向けの簡略化されたマインドフルネス介入:パイロット研究」では、プライマリケアの臨床医に対する短期のマインドフルネス介入が、職務満足、生活の質、および共感心にどのような影響を与えるかを調査しています。

このパイロット研究では、30人のプライマリケア医師が「4週間の簡略化されたマインドフルネスに基づくストレス軽減プログラム(MBSR)」に参加しました。このプログラムは、瞑想やヨガ、心身の認識を高める練習を含む集団セッションで構成されています。

研究の結果、参加者は介入後に、職務満足、生活の質、および共感心の向上を報告しました。さらに、参加者は自分たちのストレスや燃え尽き症候群の症状をより効果的に管理できるようになったことを示唆しています。

この研究はパイロット研究であり、規模が小さく、より広範な研究が必要ですが、短期のマインドフルネス介入がプライマリケア医師の福祉と職務満足に良い影響を与える可能性を示唆しています。これは、ストレスの高い医療環境で働く医師にとって有益な手法であることを示しています。

おわりに

このように、医療従事者がマインドフルネスを実践することでどんな変化が起こる可能性があるのか?についてイメージが膨らんだだのではないでしょうか?

今現在、著者は、病院や施設での医療従事者やスタッフ対してマインドフルネス研修を行っていますが、スタッフがマインドフルネスを実践することで得られるメリットは、自分自身のウェルビーイング、職場での人間関係、治療関係の向上と多方向で見受けられるため、今後も継続的に実践していきたいと考えています。

最大のネックは、「医療従事者たちの忙しさ、時間のなさ」です。8週のMBSR受講などが時間的に厳しい場合であっても、2時間を2回、4回など少ない時間でも、マインドフルネスの恩恵を受けることができると思われるため、現場のニーズに合わせたプログラムをオンライン・対面等で提供していきたいと考えています。

医療従事者に対する職場でのマインドフルネスの導入をご検討されている場合は、以下のフォームよりお問い合わせいただければと思います。