AI革命によって起きる“AI公害”とは?真面目な人や自己肯定感の高い人は特に注意? 自身のウェルビーイングを守るために、知っておきたいセルフ・コンパッション3ステップ

先日、マインドフルネス心理臨床センターでは、グロービス経営大学院教員であり、セルフ・コンパッション(MSC)講師でもある若杉忠弘先生を講師にお迎えし、オンラインセミナー「AI時代を生き延びるための必須スキル:セルフ・コンパッション」を開催しました。本コラムでは、大好評だったセミナー内容をご紹介します。

AIとウェルビーイングの関係

セミナーは次のような問いかけから始まりました。 

「皆さん、生成AI使ってますか?」

 「AIをより使うことで、私たちのウェルビーイングは上がるのか?それとも下がるのか?どう思われますか?」

まさにいま、私たちは「AI革命」とも言える時代を迎えています。かつての産業革命や原子力革命などと同じく、大きなテクノロジーの進展の裏には、必ず副作用=ネガティブな側面があることを認識する必要があると、若杉先生は強調します。

実際、137カ国を対象とした大規模調査では、「AIが普及するほどウェルビーイングは低下する」という傾向が明らかになってきており、AIの導入率が10%増えると、幸福度が10%下がるというデータも発表されています。

なぜAIはウェルビーイングを脅かすのか

 AI導入が進む企業現場では、「パフォーマンス向上」が主な目的であり、「ウェルビーイング」への影響は二の次にされがちです。しかし、その影響は見過ごせません。AIによって働き方が機械的になり、対人関係の時間が減少、孤独感が増し、ストレスや不眠症、飲酒量増加の報告や、同僚へ優しく接することができなくなったという企業での実際の事例なども報告されているそうです。

「AI公害」とも言えるような、見えにくい健康被害が、私たちの心身に影を落としているのです。

AIのネガティブな影響を受けやすいのはどんな人?

最近の研究によると、AIによる影響を受けやすいのは、特に以下のような人たちだそうです。

まず、属性面で言うと若い人、男性、高収入、高スキル、製造従事者。性格面で言うと、真面目な人や自己肯定感が高い人。真面目人は秩序を好みルールや細部まで気にする自分の特性が「AIとキャラ被り」しているように感じ、自己肯定感の高い人は今まで自分の高い能力でできていると思っていたことが「AIに奪われる脅威」に不安を感じるそうです。

このように「自分の仕事がAIに置き換えられるかもしれない」という脅威を感じた時、そのギャップに苦しみ、自己評価が揺らいでしまうことがあります。

私たちはどうすべきか?――セルフ・コンパッションの3ステップ

こうした時代に、自分を守るための「心のスキル」としてセミナーの中で提案されたのが「セルフ・コンパッション」です。セルフ・コンパッションには3つのステップがあります。

  1. マインドフルネス 今の状況や体験をそのまま受け入れ、バランスの取れた視点を持つ。たとえば、AIに対して不安や戸惑いを感じる自分を否定せず、「そう感じている自分がいる」と気づくことから始めます。
  2. 共通の人間性 「自分だけじゃない」。この混乱の時代に、不安や孤独を感じているのは自分だけではないと理解すること。孤独感から自分を責めるのではなく、人間である以上、誰しも不安や脅威を感じるのは自然なことです。
  3. 自分へのやさしさ 自分自身に思いやりと励ましを向ける。「がんばってるね」「怖くても大丈夫だよ」と、自分が大切な友人だったらどんな言葉をかけるか、想像してみる。

この3ステップが、セルフ・コンパッションです。

簡単にできる2つのエクササイズ

セミナーの中では、このセルフ・コンパッションをより簡単に実践できる2つのワークも紹介されました。

友人への声がけワーク

 「あなたの大切な友人が、自分の仕事がAIに置き換わるかもしれないと落ち込んでいます。あなたならどんな声をかけますか?」

この問いに答え、同じ言葉を自分自身へかけてあげることで、自分への優しさを育む言葉が見つかります。

価値観のワーク 

「あなたにとって最も大切な価値観を1つ思い出してください。なぜそれが大切なのか?その価値観を過去にどのように発揮したか? 考えて見てください」

このワークを通し、AI時代にこそ自分の中にある揺らがない価値観を認識し、その価値観に沿ってAIを活用していくことが大事なのだと改めて感じられるのではないでしょうか。

これらのワークなどを通し、セルフ・コンパッションを実践することで、ネガティブが減少しポジティブ向上し、それがビジネスでのパフォーマンス向上につながっていきます。

終わりに

 AIは、ウェルビーイングを高める可能性もあれば、損なうリスクもあります。 特にビジネスの現場では、「効率化」「生産性向上」といった側面ばかりが注目されがちですが、心のケアが置き去りにされては、組織も個人も持続可能ではありません。だからこそ、「セルフ・コンパッション」を一つの自衛手段として、そしてこれからの時代に必要な“人間らしい力”として、ぜひ取り入れてみたいと思えたセミナーでした。

\ 秋にはビジネスパーソン向けのセルフ・コンパッション講座を開催予定です! /

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