日本心理臨床学会第41回大会で、マインドフルネスの研究について口頭発表しました
2022年9月日本心理臨床学会 第41回大会
口頭発表:マインドフルネスを用いた大人援助職へのセルフケアの可能性
ー計6回のマインドフルネスプログラムの効果評価分析ー
小林亜希子
菊地創
方法:
当センターにおいて、オンラインzoomを用いた計1.5時間×6週のマインドフルネス講座(有償)を隔週で、2021年に計3回クール実施した。受講者に講座受講前と後に効果測定のため量的・質的アンケートを実施した。アンケートは任意であること、データは研究に使う等の説明を書面にて行い同意のとれた参加者からのデータを収集し、HADで、ウィルコクスン符号付き順位検定を用いたデータ解析を行った。アンケートに用いた質問表は、FFMQ(マインドフルネスを測定)、BAT-J(日本語版バーンアウト・アセスメント尺度)、SRS-18(心理的ストレス反応尺度)および参加動機と、参加後の気づきについて問う自由記述である。
結果:
アンケートに前後回答の協力を得られたのは14名、性別の内訳は男2名(14.29%),女12名(85.71%)、平均年齢は53.2歳であった。瞑想歴については、初めてまたは数日が4名(28.6%%)、半年未満が4名(28.6%)、1年未満が2名(14.3%)、1年以上が4名(28.6%)であった。結果、BAT-Jの情緒的コントロールの不調ポイントが、6.43から5.71に、統計学的に有意に減少した(p=0.03)。その他の結果では、統計的に有意な差は見出されなかった。受講後アンケート自由記述について、テキストマイニングを実施したところ、「セルフケア」「働きかける」「セルフコンパッション」の用語が多く使用されていたことが判明した。
考察:
今回の調査では、プログラム実施後に、BAT-Jの下位項目である「情緒的コントロールの不調」が低下したことが示された。感情的の反応性に大きく振り回されることなく仕事に向かえることは、感情的安定性をもち、仕事におちついて取り組めるようになることが推察できる。海外の632人の看護師を含む17の論文を対象にしたマインドフルネストレーニングの効果についてのメタアナリシス(Suleiman-Martos et al., 2020)では、マインドフルネス・トレーニングは,看護師の感情的負担を軽減し,その結果,バーンアウトのレベルも低下させることを明らかにしている。
また、対人援助職の方が、セルフケアのためのマインドフルネスの時間を作り、実践&シェアすることが、一種の自助グループ的に作用したとも推察できる。事実、事後自由記述アンケートでは、「セルフケア」の用語が用いられることが多く、「メンバーの方と共に実践している感覚が充実した受講に繋がった」との記述も見られた。
キーワード、マインドフルネス、バーンアウト予防、対人援助職
参加者の皆様、アンケートにご協力くださった皆様、ありがとうございました。