さまよう心とマインドフルネス 

こんばんは〜 臨床心理士&マインドフルネス講師の小林亜希子です。

今日は、さまよう心とマインドフルネスのお話をしていきます。

心とは、さまようものである

カバットジン の瞑想導入で繰り返す言葉がある。

If you have a mind, it is going to wander.(心は、さまようものです)

私たちの心は、特にすることがないと、さまようものである。マインドフルネス、つまり瞑想中は、この心のさまよいに惑わされ、呼吸に意識を向ける等の瞑想を続けるのが難しいことも多い。

しかし、瞑想を継続して行っていると、さまよっていることに気づいてもとに戻れるようになる。このことがマインドフルネスの効果である。

どれくらい心は、さまようものなのだろうか?2010年に発表されたサイエンス誌の論文で、KillingworthとGilbertは、Iphoneのアプリを用いて2250人のボランティアを対象に実験を行った。

ボランティアに、ランダムに「今していることに注意を向けているか?」と質問したのだ。その結果、46.9%の時間、参加者の心はさまよっていたことが示された。 ほぼ半分の時間、我々の心はさまよっているのだ。

デフォルト・モード・ネットワークは、ワシントン大学のレイクルらによって2000年ごろ発見された(Raichle ME et al, 2001)。安静状態で活性化される脳領域と、心が何かの課題を行っている時には活性化されない脳領域を相互につなぐネットワークが存在することが判明した。

デフォルト・モード・ネットワークは、脳の前方(内側前頭前皮質)から後方(後帯状皮質)に至るまでの領域に存在している。この領域は、人間が何も注意を向けていないときほど活発に機能するので、心がさまようわけである。

デフォルト・モード・ネットワークの3つの役割

1. 自分自身の感覚をつくる

2. 過去と未来について反映する

3. 問題を探す

デフォルト・モード・ネットワークの働きは、この3点である。

シャワーを浴びていたら、気づいたらシャンプーもトリートメントも終えているようだがよく覚えていない。そんなことはないだろうか? シャワーを浴びている行動をしているのに、心はどこかへ行ってしまった。これがデフォルト・モード・ネットワークの働きである。

つまり、デフォルト・モード・ネットワークの作動中、私たちの心は、さまよい生存のための脅威がないか探すのである。生存のためにもとは必要だったのだろうが、快適あるいは幸福とは言い難い。

このように、私たちの脳は、余分な時間があると、何か解決すべき課題がないかを過去や未来に何かないかを探そうとする傾向があるのだ。

マインドフルネスは、デフォルト・モード・ネットワークを無効化する

研究では、マインドフルネスは瞑想中も(Brewer et al., 2011)、休んでいる時でも(Taylor, et al., 2012)、デフォルト・モードネットワークを無効化することが示されている。

マインドフルネスを実践していれば、心に余裕ができるので、状況にどのように対応したいのかを自由に選べるようになるのだ。

マインドフルネスでは、思考や感情の経験に対して、自動的に、意識しないでかかわるのではなく、「意識的な気づきをもって」かかわることができるようになる。

つまり、マインドフルネスを実践すればするほど、ぼんやり過去や未来をさまようのではなく、よりよい選択を意識的にとれるようになるわけだ。

参考文献

マインドフル ・セルフ・コンパッション ワークブック 星和書店

あなたの脳は変えられる ブルワー ダイヤモンド社